†captivity†(休載)

──お祝い



気付いた時には心地よい感覚と共に意識の底へと沈んでいた。



「──か」



それは一瞬に感じたけれど、次に目覚めた時には一時間近くが経過していた。



「──か、和歌」



心くんの心地良い声に呼びかけられ、スッと意識がはっきりする。



「お、起きたか」

「和歌、ごはん、できた」



心くんの奥に見える奏多くんから伝えられる言葉に、意識を落とす前の最後の記憶を探り、ここが心くんの家なのだと思い出す。



「おはよ」

「……おはよう、奏多くん」

「和歌、俺には?」

「…………おはようございます、心くん」

「はよ」



いや、なんで彼までおはようを求めているのか。

というかなんであたしも言われるがまま返しちゃってんのか。



あのまま、本当にずっとあたしを膝枕したままでいたらしい心くんは、溶けた氷の袋を奏多くんに渡し、あたしの起き上がる背中を支えてくれる。

体を起こすと、少し体が痛くなっていたけれど、心くんは足が痺れたりしなかったのだろうか?



「すみません、お膝またお借りしてしまって」

「いや、最高だった」

「最低ですか」



キリっとした顔でまた叩かれる軽口に、反射的に反抗してしまう。

膝に乗せた感想が『最高だった』とは一体どういうことなのか変態め。

おっと、今はもう彼氏なんだった、膝枕くらい日常的にあるものなのかもしれない。



でもよく考えてみて、膝枕って普通する側が逆なのでは……?

と、今更ながらに思い至り、自分たちの中の常識を疑う。

いや、別に逆だろうがこのままだろうがいいとは思うけれど、どうにも心くんはあたしを膝に乗せたがる傾向にある気がするのだ。

……今度は自分が膝を貸すべきなのだろうか?

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