†captivity†(休載)


その衝撃を受け、数秒の沈黙が漂う。



「あれ?」

「綾愛ちゃん……あんまり和歌を混乱させないであげて……」

「失敬失敬。あれ、まだ知らない情報でしたかこれ?誰も話してないんですか?」

「あの状態の悟先輩の前じゃ禁句に等しいでしょう……」



灯くんが両手で頭を抱え込んでしまった。

ごめん……あたしより思い悩ませてしまっているようで……なんかごめん……。



隣の奏多くんから背中をポンポンと優しく叩かれている。

その場所あたしと交換してくれないかな、あたしもポンポンされたい。



「まぁ確かに、前にその事を聞こうとしたら、とってもにこやかな顔で『なんのこと?』って牽制されて、私も以後その件には触れていません」

「東先輩のにこやかな顔ほど怖いものはないと思いますが」

「全くその通りですね!」



綾愛さんでさえそうなんだから、他人がそれを聞いたらどうなるか……全く想像がつかない。

あの人キレると暴言吐くか満面の笑みになるのか極端なんだもの。



「今回の綾愛の計画でそれも思い出させることになるんじゃねぇか?」

「思い出させる……?」

「無理に接触させる気はありませんよ、その都度集まるごとに本人の了承は得ます」




話しを聞く毎に新たな情報が増えていく。

あたしの知らない、東悟の過去の情報。



「お兄ちゃんが、前はとても優しいごく普通の人だったことは、知っていますか?」

「それは、聞きました。今じゃ想像も付かないけど……」

「それを……元カノさんが壊したんです、裏切ったんです」



欠けていた情報のパーツが、パチリ、パチリとはまり出す。

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