瑠哀 ~フランスにて~

-4-

 瑠哀は朔也達から離れて、適当にホールを歩く。

 別にそこらにいるウェーターが運んでいるグラスを取っても良かったのだが、しばらく時間を潰した方が良さそうだったので、うろうろしていたのだ。



 あんな朔也を見たことが無かった。

 穏やかで、激しい感情の起伏など見せない人だと思っていた。

 だから、あんな風に熱く激しく見つめられたら、瑠哀はどうしていいかわからない。



 きっと、何か思うことがあったのだろう……。



 そんなことを考えながら、マーグリスがいるらしき所に来た。

 遠巻きに身ながら、そ知らぬ振りをしてその人物を探す。



『彼ね――』


 確かに、杖をついていてかなり年が行っているように見える。


『え……!?』


 瑠哀は目を大きく見開いた。



 その老人の近くにいた人物に見覚えがある。

 それは、当然だった。瑠哀を尾け回していた、正にその張本人である。



 男は近くのドアから出て行くようにした。



 瑠哀も慌てて間近のドアに飛び付いた。

 中庭に続く廊下を小走りに駆けながら、辺りを見渡してみる。



『……こっちに来たと、思ったのに―――』


 見失ったのだろうか。そんな時間は、なかったはずなのに………。


「誰を探している?」


 振り向きかかって、首に強いショックを感じた。


「んっ―――!!」


 目の前にあの男がいる。両腕で瑠哀の首を掴み上げ、その指に力を込める。


 瑠哀はその指を剥がすようにしながら男を睨め付けた。


「こんな所で何をしてる。

ノコノコ顔を出して、あいつに会いに来たのか?俺の邪魔をするな。

お前がどんなにあいつらをかばったって、もう遅い。

さっさといなくなるんだな」
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