瑠哀 ~フランスにて~
「おじいちゃん?ぼく、しらなかったな。

おじいちゃんが、いたんだ。しらなかったなあ」


 おもしろそうに繰り返して、クスクスと笑った。


 マーグリスは強張りながら、笑みを浮かべ見せる。


「ユージン……」



 その手をユージンの頭において、髪を撫でる。

 それを見上げて、ユージンは笑った。



「――お義父さま…」



 マーグリスはハッとして、その手を引っ込め後ろを向いた。

 そこに立っている人影を認め、険しい表情をみせる。



「お前か――!よくも、ノコノコと私の目に顔を出せたものだな」



 語気強く吐き捨てて、マーグリスは言った。

 セシルは泣きそうな顔をして、小さくうつむいた。



「お久しぶり、でございます……」

「ふん、久しぶりだと?

お前なんか、久しいだなどと思ったこともないわ。

私のたった一人の息子を奪い去った女など、汚らわしいっ」



 唾を吐きかけるような勢いでマーグリスは怒鳴る。

 セシルはその罵声に耐えられずに、クッと手を口に当てて横を向いた。



「ママンを泣かすなっ!!エイッ―――」

「うわっ…―――!」
< 112 / 350 >

この作品をシェア

pagetop