瑠哀 ~フランスにて~
 マーグリスは足を抱え込むようにしてしゃがみ込んだ。

 ユージンがその足を上げて、思いっきりマーグリスの足を蹴り上げたのだ。



 タッと、セシルの所に走り寄って、両手を広げた。


「なんだよ。ママンをいじめるやつは、だれだって、ゆるさないからなっ!!」



 ユージンは怒ったように顔を赤らせて、マーグリスを睨み付ける。

 マーグリスは理解できないと言うような顔をして、ユージンに言う。



「ユージン……、私はお前の祖父だ。そんな女など、なぜかばう……?」

「おまえなんんか、ぼくのおじいちゃんなんかじゃないっ。

ママンをなかすやつは、おじいちゃんなんかじゃないっ!

かえれよっ!」


 ユージンはひっきりなしに怒鳴り、むうっとした顔をしてみせた。


「何を―――?!」

「子供は正直ですね」


 そこに静かな声が割って入った。


 瑠哀がユージンのところに歩み寄って来て、静かに膝をついた。


「ユージン、もう大丈夫よ。

ママンを守ってるのね。

えらいわ、さすが男の子ね」



 優しく笑ってユージンの頭をクシャッとかき撫でた。

 そして、一生懸命に手を広げ絵入るユージンの腕をそっと下ろすようにした。



 瑠哀は立ち上がってマーグリスを振り返る。


「手荒なことはするな、と忠告したはずですが。

―――どうやら、せっかくあなたにチャンスをあげたのに、

あなたは自分でそれを壊してしまったようですね。

二度目はありません。

もう、帰っていただきましょうか」
< 113 / 350 >

この作品をシェア

pagetop