瑠哀 ~フランスにて~
「私は……そのことには、関わりないと言ったはずだ。

私は孫を襲ったりはしない。その為に、ここにきたんだ」

「知ってるわ。

でも、あなたがそんなふうだから、そこをつけ込む奴がいる。

彼らを危険にさらしている奴がいる。

無実だと証明するためにここに来た、と言ったわね。

それから、どうするの?もう、無実を証明したから、後のことはどうでもいいわけ?」


 苛烈な声音で瑠哀はマーグリスを容赦なく責め立てる。


「―――私に、どうすれと、言っているんだ?」

「どうしたいの?

実の孫が危険にさらされているのに、

あなたは何をしなければならないのかも判らないの?

私だったら、自分のできる限りのことをしてでも、彼らを守るわ。

彼らが大切なら、どんなことをしてでも守ってみせる。

―――あなたに、そんな感情があるのかしらね」


 瑠哀は静かにマーグリスを見下ろしていたが、何の反応も見せないその男にみきりをつけて歩き出した。


「行きましょう」


 歩きながら、瑠哀を見ていたセシルに言う。


「………待って、くれ」



 瑠哀は足を止めて首だけを回した。

 マーグリスが重たい体を起こして、よろよろと立ちあがる。



「誰が…、狙っているんだ?」


 瑠哀は冷たく睨み付ける。


「頼む、教えてくれ。――――お願いだ」
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