瑠哀 ~フランスにて~
「ケイン、と言う名に聞き覚えは?」

「ケイン?―――それは、私の甥の息子の名だ」

「甥の息子?!

―――彼のポジションは、どういったものなの?」

「ポジ…ション?」

「マーグリスの一族として、彼は何?」

「あれは、嫁にいった私の姉の孫で、一族には関係ない。

まさか――、あれが、ユージンを狙っているのか?」

「そうよ。それだけの理由があるはずよ。

本当に、一族とは関係がないの?」


 マーグリスは動揺して、きつく眉を寄せる。


「……私には、後を告ぐ者がいない。

だから、年の若いあれを養子として立て、

形式上私の財産を継ぐことになっている。

だが、これは私個人の資産で、一族の運営とは関係ない」

「だったら、それね。

ユージンは正当な後継者だもの。

あなたの個人資産だけじゃなく、一族の財産も彼のものだわ。

それで―――、あなたはどうしたいの?」

「どう…したら、いいんだ?」


 マーグリスは懇願するように、瑠哀を見上げた。



 瑠哀は溜め息をついて、一つ提案をした。

 あの男を見てから、ずっと考えていた案を――――

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