瑠哀 ~フランスにて~
「セシル、あなたも聞いていた通り、彼の義理の息子がこれを仕掛けているの。

マーグリス氏は無実だと言うのは、たぶん本当よ。

そこまでするほど、彼の状況は切羽詰っていないと思うの。

それで……、ここにいてもいいんだけれど、それだったら、

いつまでたってもこの問題を解決することはできないわ。

だから――、あなた達に少し危険を冒してもらわなければならないの」

「え?それは―――」



 セシルは怯えた表情を見せる。

 出会ってから気づいたことだが、彼女はかなり繊細な女性のようだった。

 気が弱く、いつも心配をして眉間にしわを寄せいるような女性だった。



「彼の家なら、あの男も容易に近づくことができる。

ここにいるよりは、あの男が来る可能性が高いでしょうね。

だから―――、あなたにその覚悟を持って、彼の家に行くことを決心して欲しいの」

「そんな………!?

――だったら、なぜ、義父の屋敷に行くことを提案したのですか?

危険とわかっているのに、なぜ………?」

「いつまでもこんな状態を続けることはできないわ。

はっきりとカタをつけなければ、どこにいても狙われることには変わりがないでしょう。

私があなた達の為に何ができるかは判らないけれど、…でも、力を貸すことはできる。

もしかしたら、あの男を追い詰めることができるかもしれない。

だから、彼の家に行きましょう」

「私に……、その危険を、冒せと?」

「無理強いはできないわ。

決めるのは、あなただもの。

でも―――、時間がない。

私はいつまでもあなた達と一緒にいれるわけじゃないから……。

私がいなくなった後のあなた達が、とても心配。

彼の家に行けば、解決策が見つかるかもしれないもの。

お願い」


 瑠哀は真っ直ぐにセシルを見つめるようにした。
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