瑠哀 ~フランスにて~
 セシルは深く息をついて、微かに頷いた。


「良かった。ありがとう」


 瑠哀はセシルの前まで行き、少し屈むようにしてその手を取った。


「大丈夫よ。あなたもユージンも、きっと、静かに暮らせるようになるから」





「――――おかしな光景だな」


 ピエールは、おもしろくない、と言った顔で、軽く首を傾けて朔也に耳打ちした。


 朔也は横を向いて、何がだ、と言うふうに片眉を上げてみせる。


「彼らの為に傷だらけになっているのは、ルイだ。

なんで、ルイがお願いするんだ?放っておこうと思えば、いつでも放っておくことができた。

なのに、ルイはそれをしなかった。

ルイが心配してやってるのに、彼女は仕方なく頷いた、と言った感じだ。

お願いして来てもらのは、彼女の方だ」

「ピエール……。それは、そうなんだが――、

ルイは心配してやってる、と言う感情はないんじゃないかな。

彼らの問題だけど、ルイが勝手に決めたことに責任を感じているんだと思う。

どんな事情があるにせよ、彼らが承諾しなければ、

ルイがなんと言おうとも、どうすることはできないからね」

「ふん。どうすることもできないなら、そのまま放って帰ればいい。

ルイは、信じられないくらいのお人好しだな」

「そうだね。彼女は、優しいから」
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