瑠哀 ~フランスにて~
 朔也が小さく苦笑いのような笑みを浮かべたところに、セシルを部屋に戻した瑠哀がクルリと向き直って、二人を見た。


「あのね、二人にお願いがあるんだけれど」


 瑠哀は意味ありげに笑む。


「なんだい?」

「私がお願いしても、怒らない?」

「怒らせるようなことなの?」


 瑠哀は一拍おいて、また笑んだ。


「そう――いうわけでも、ないんだけれど…」

「口調があやふただな。なんだい?言ってごらん」


 瑠哀はそれで真っ直ぐ二人を見つめたまま、口を開いた。


「今まで、本当にありがとう。

お礼の仕様がないくらい、たくさんお世話になって。

その上、私の我が侭で振りまわしてしまったし……。

ありがとう。とっても、感謝しているわ」


 ピエールと朔也は少し眉を寄せる。


 瑠哀は静かに笑った。


「マーグリスの屋敷には、来ないで」

「なに?」

「何を言ってるんだ?」


 二人が即座に聞き返す。
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