瑠哀 ~フランスにて~
「ママンは、ユージンのことがとても大好きよ。

とても、大切にしているわ。

―――ただね。

ママンはちょっと怖い思いをしているから、今はあまり話をしないだけなのよ。

ママンはとても繊細な女の人で、怖い思いに耐えられるだけ強い女性ではないの。

わかる?」

「こわい、って…?」

「この間の悪い奴を覚えている?

あいつが悪いことを考えて、ユージンとママンを狙っているから、ママンはそれが怖いのよ。

だから、ユージンを嫌いになったわけではないの。

そんなふうに考えないでね。

あの悪い奴を捕まえたら、きっと、ママンも以前と同じように話しかけてくれるから、

ユージンもそれまではママンを元気づけてあげてね。

今のママンには、ユージンが必要だから。

ユージンがママンの側についている間、私があの悪い奴を捕まえに行くわ」

「ルーイが?ほんとうに?わるいやつをつかまえてくれるの?」

「そうしないと、いつまでもユージンとママンはお話ができないでしょう?

ユージンも怖い思いをしていると思うけれど、もう少しだけ辛抱してね。

私もがんばるから」

「うん。でも、ルーイはこわくないの?

ルーイもおんなのひとでしょう?」

「私はね、普通と違うから怖くないのよ。

私がいない間、ユージンにママンをお願いしてもいいかしら?

ちゃんと、ママンの側についていてくれるかな?」

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