瑠哀 ~フランスにて~

-3-

「ルーイ、入ってもいい?」

 ユージンがドアから顔を出した。

 瑠哀は優しく微笑んでユージンを引き入れる。



「どうしたの?遊ぶことが無くて、退屈かしら?」

「うん…………」



 ユージンは浮かない顔をして下を向いた。

 腕を後ろで組み、靴でカーペットをこすったりなぞったりしている。



 瑠哀は屈んでユージンの顔を覗き込んだ。そっと、頬を包み込む。


「ユージン、どうしたの?話してごらん?」

「………ママン、ぼくのこと、きらいになっちゃったのかな――――」


 ユージンは悲しそうな瞳を瑠哀に向けて、小さなその手を伸ばして瑠哀の首にしがみついた。


「ママン…、ぼくのことがきらいになっちゃったのかな……。ぼくのこと………」


 最後のほうが泣き声になり、そのままユージンは黙り込んでしまった。


 瑠哀はユージンをぎゅうっと抱き締め優しく髪にキスをして、ユージンを抱き上げてゆっくりと朔也達の方に歩いて来た。



「どうして、そんなことを言うの?

ママンはね、ユージンのことをとっても愛しているわよ。

ユージンも知っているでしょう?」

「うん……。でも、ママンはぼくのことがきらいになったんだ。

ぼくと、はなしたくないんだ――――」



 瑠哀はもう一度ユージンの髪にキスをして、静かに椅子に腰を下ろした。

 その髪を優しく撫でながら、ユージンのほほを両手で包んで顔を上げさせるようにした。
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