瑠哀 ~フランスにて~

-4-

「今日はまだ一段とお美しくあられて」


 ヴォガーは食事に手をつけながら、にこやかに笑む。

瑠哀も一応おざなり程度に微笑んだ。


「あなたがお呼びしてくださって、私は本当に嬉しいですよ。

あなたに頼まれたものは、ここに揃っています。

あなたが知りたがっていることは、全て調さしたと私は思っています」

「早いのですね。

お願いしたばかりだと言うのに、こんなに早くに済んだのですもの」


 瑠哀は半分感心したように言う。男はにこりと笑った。


「あなたにお会いした一心ですよ。

まさか、あのパーティーであなたにもう一度お会いするとは、思ってもいませんでしたから。

それも、あのピエール・フォンテーヌ氏のエスコートでね」

「そうですか?」


 瑠哀は気のないふうで答えた。

「そうですよ。

あのピエール・フォンテーヌが女性をパーティーに連れて来た。

それも、あなたを。

会場のほとんどの人間が驚いていました。

人を寄せ付けないで有名な彼が、女性と歩いているのですからね。

天地が引っ繰り返るほど、驚きますよ。

―――あなたは、彼にとって特別なのでしょうか?」


「答える義務を感じません」
< 140 / 350 >

この作品をシェア

pagetop