瑠哀 ~フランスにて~
「僕達が、君の誕生日も祝わないような冷たい奴らだと思ったの?」

「そんなこと、思わないけど………。うそ――、すごい、嬉しい」

「喜んでくれた?」

「もちろんよ。ありがとう」



 瑠哀は少し屈んで、まず、バラの花束にそっと顔を近づけた。

 ほんの近くに寄っただけでも、そのツンとした豊かな芳香が鼻をくすぐっていく。

 その花束を見ているだけで、ほぅ…とため息が漏れてしまう。



 そして、ケーキの方にも目線を向けた。

 その上には、きちんと、“Happy Birthday,Rui”とデコレーションがされていた。



 瑠哀が嬉しそうに笑った。


「ありがとう、二人とも。すごい、うれしい」


「それは良かった。―――ところで、ルイ。聞きたいことがあるんだけど?」

「なあに?」

「『あなたの熱い瞳が忘れられなく、夜も眠れないほどです。

心を奪われ、あなたの虜になってしまった私は、どうしたら良いのでしょうか?』

―――これって、どういうことだい?」



 瑠哀は訳が判らず、眉をひそめてピエールを振り返った。

 ピエールはつんと拗ねたような顔をして瑠哀を見ている。



「なに、それ?本の一節かなにかなの?」

「一体、どうなったら、笑わない氷の瞳が熱い瞳に変わるんだ?

身に覚えがあるだろう」

「氷の瞳―――」
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