瑠哀 ~フランスにて~
 浮き輪に掴まりながらリチャードの行方を確認する朔也の遥か彼方に、

何隻もの船がかたまっていた。

 スーッと、一直線に小型のボートが、朔也から見える水平線に沿って飛び出して行った。

 まだ、抵抗を続けているようだ。この場になっても諦めの悪い男だった。



 一隻だけ猛烈な勢いで飛び出して行くその同じ方向に、

もう一隻の小型ボートらしき船も一直線に進んでいるように見える。

 目を凝らしても、同一直線状を交差しようとしているのに、

リチャードのボートの速度が落ちはしなかった。

 気付いていないのか。

 邪魔だと蹴散らすのか。そして、もう一隻も速度を落としていないように見える。

 むしろ、リチャードに突進していくかのように、加速してさえ見える。



 どちらも引かない、引けないのか―――


 ドンッ!


 グワッ―――!
 ドカンッッ!!


 一瞬の直撃で、その次の瞬間には双方のボートが木っ端微塵に吹き飛ばされた。

 轟音だけが響き渡り、そこから炎上した炎が燃え上がり、

もくもくとどす黒い煙を立ち上げ始めていた。


 真正面から互いに直撃だった。

 どちらのスピードを考慮しても、どちらも生きている可能性はないに等しい。



 高慢な男の最後は、それに相応しいと言うべきか、あっけない終焉でその幕を閉じた。


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