瑠哀 ~フランスにて~
 かすれた、それでも、はっきりと意識の戻ったその声を聞いて、

朔也は思わず、ぎゅっ、と下にいる瑠哀を抱き締めていた。



『――ルイ、良かった――』

『サクヤ…』



 モソ、と朔也の腕の下で瑠哀がなにか動くので、

しっかりと抱き締めていた朔也はそれで少し顔を上げた。


 瑠哀が朔也の胸の下から自分の腕を出したいようで、

手首を縛られたままの不恰好なその様子を見て、朔也は不思議ながらも、

瑠哀の為に少しだけ体を起こし出して行く。



『ルイ?』

『サクヤ―――』



 腕を出した瑠哀は、そのまま朔也の頭の後ろにその腕をくぐらせるようにして、

バッと抱きついて行った。



『サクヤ。もう――、会えないかと思った……。

サクヤ―――』



 その細い体を寄せて、ぎゅぅっと、しっかりしがみついてくる瑠哀を感じながら、

朔也もまた同じようにぎゅぅっと瑠哀を抱き締め返していた。



『ルイ。良かった。

君が無事で――、本当に良かった…』


『サクヤ。――もう…、二度と会えないかと、思った…』


『ルイ。無事で良かった。

君が無事で――、本当に良かった』


『ありがとう、サクヤ。

ありがとう、助けに来てくれて―――。

サクヤ、ありがとう…』


『君が無事で、良かった―――』


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