瑠哀 ~フランスにて~
 モーテルに着くまでの間、瑠哀たちは会話の途切れることが無かった。

 その一つに、朔也はどのように話を続けるか知っているからであろう。



 人の話を聞きながら、決して話の先を折らない程度に相槌を返し、新しい話題を良い時に持ち出す。

 相手を退屈させない人だ、と瑠哀は思った。




『―――ここなの。送ってくれて、ありがとう』

『どういたしまいて。また、明日』


 瑠哀は朔也が歩き出すのを待っていたが、朔也も瑠哀が中に入るのを待っているようだったので、また明日、と言い残し、階段を上り出した。



 中に入ってその急な階段を上りながら、つい、後ろを振り返って確かめてしまう。

 誰もいないことに安堵し、四階まで上がる。



 鍵を出しながら、自分の部屋の前で立ち止まり、それを差し込もうとして、なにか様子が変なことに気付く。


『………こすった跡?!』



 鍵穴の周りを指でこすりながら、その跡をじっくりと見る。

 こすったと言うか、引っかいた跡のようだった。



 よく見ると、木のドアの掛け金に近い部分がえぐれている。

 何かを差し込んで、無理矢理、こじ開けたようだった。



『―――――!!』


 瑠哀は一気に背筋が凍りついた。
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