瑠哀 ~フランスにて~
「ですから、マドモアゼル・ミサキには、

私ができることであれば、何でもしなければならないと思っています。

十分にお礼をすることもできないまま、マドモアゼル・ミサキが発たれ―――」


「何を言ってるっ?

ルイは、まだ、ここにいるはずだ」



 ピエールが鋭く口を挟むが、マーグリスはただそのピエールを静かに見上げているだけだった。


 すぐに、ピエールの顔付きがサッと変わる。



「ルイは、どこだっ」

「そのことで、あなたにお伝えすることがあります。

それを、マドモアゼル・ミサキから頼まれましたので、私があなたをお訪ねしたのです」

「ルイは、どこだっ」



 鋭く、感情など微塵も入っていないほど冷たく、ピエールが突きつける。



「マドモアゼル・ミサキは、昨夜遅く――深夜に、ここをお発ちになっています」

「な、に――!?」



 ピエールが激しく顔をしかめてみせた。



「ルイが、ここを発っているっ!?

―――ふざけるなっ。

ルイが一人で立ち去るなど、有り得るはずがない」



 激しく譴責するピエールにも、マーグリスはあまり動じているようではなかった。


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