瑠哀 ~フランスにて~
「マドモアゼル・ミサキは、自分の飛行機のチケットを変えることができない為、

明日――今朝にはフランスを発たなければならない、と。

私が違う便の手配をするようお話ししましたが、

帰国し、マドモアゼル・ミサキの帰りを待っている身内が心配するからと、

無理をして、昨夜のうちにここを発っています」


「帰国―――」



 それを繰り返すピエールは眉根を寄せ、何かを考え込んでいるようだった。



「フランスには観光で来ていた為、すでに期限が切れてしまったのだ、

とおっしゃっていました」

「観光?―――観光?!」



 ハッと、そこでピエールはすでに自分が忘れていた重大な事実に気付き、愕然としていた。



「観光客であったとは存じませんでしたが、

マドモアゼル・ミサキも、そのことを忘れていた、とおっしゃっていました。

ですから、家に帰らなければならないのだ、と。

―――フォンテーヌ氏とカズキ氏のお二人には、

マドモアゼル・ミサキからの言伝を預かっています。

その手紙をお二人に渡すように、頼まれました」



 その最後の説明まで聞かずに、ピエールはバッと乱暴に封筒を開けて、中の手紙を取り出していた。


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