瑠哀 ~フランスにて~
 会いたい時には、探しても会えなかった。

 なのに、なぜ、こんな所で出会うのだろうか………



 確か、名前は―――


「―――ユージン?」


 子供は顔を上げて、ポカンとして瑠哀を見る。


「私を覚えている?パリで会った」


 子供の瞳が大きく開けられ、驚きの表情をみせる。


「―――ルーイっ!!」


 本当に、これも偶然なんだろうか。

 ここはリゾート地だから、休暇に来ているのかもしれない。

 だけど、あまりに信じられない偶然だ。



 瑠哀が、偶然、パリで襲われているこの子供と母親を救った。

 そして、偶然、ここで助けた子供が、その彼だった。



 偶然が重なって、偶然、ここで出会う。



――――…嫌なことが起こらなければいいけど………。



「ユージン、ママも一緒に来ているの?」

「うん。ここから近くの、“べっそう”、にいるんだ」


 ユージンは自慢そうに破顔する。


 瑠哀は、そう、と微笑み、子供を立たせるようにした。


「ユージン、その別荘まで送ってあげるね。

服がベチョベチョだから、着替えなきゃ。

風邪をひいたら、大変でしょう?」


 ユージンは、うん、と大きく頷いた。



 瑠哀が手をつなぐと、ピョンピョンと飛び跳ねる。

 その子供らしい様子が、微笑まれる。
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