瑠哀 ~フランスにて~
 瑠哀は椅子の肘掛けに肘をつき、その手に顔を乗せ寄りかかるようにした。


「だったら、私が話すことはなにもないでしょう。

ユージンは賢い子だから」

「そうだね。彼は、利発な子供だ。

きちんと、筋を通して話してくれた。

彼らが狙われているんだろう?どうして、そのことを話してくれなかったんだ?

そうしたら、他に対処の仕様があったかもしれない」

「なんとも言えない、と言ったでしょう?

彼らを狙っているから、私を見張っているの」

「あの時の君は本当に確かではなかった。

尾けられている目的は判らなかったように見えたけど?」

「そうね」

「でも、今は確かなんだ。

彼らが狙われるには、訳がある。違う?」

「たぶんね」

「君の答えは、いつもあやふやだな。

ユージンのように明確に答えてくれれば助かるのに。

俺達には話したくない理由でもあるの?」

「…迷惑を、かけるつもりはないわ」


 ルイ、と朔也は呆れたように声を上げる。


「そんなことを問題にしているんだじゃない。

君が話してくれない限り、ユージンから聞くことにも限界がある。

こんな不確かな情報では、的確に状況を判断することはできない。

そんな中で、俺は君を守ることができない」

「私を、守る?」


 瑠哀は驚いたように目を大きくする。
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