瑠哀 ~フランスにて~
「―――どうやって?」


 今度は、朔也が驚きを表し瑠哀を見返した。


 一瞬の沈黙が降り、お互いに顔を見合わせる。


「……ああ、ごめんなさい。

――守る、なんて言われたことがないから。

守られる、とも思ったことはないし…」


 瑠哀は軽く息をついた。


「…私は、誰かの背中に守られて黙っているような女じゃないわ。

私は、守られて安全と思っているより、

守られていないから自分の身は自分で守るしかない、と考えるほうなの。

誰かの後ろでただ守られていることは、とても簡単で、羨ましいと思う。

でも、それだったら、私を守ってくれる人は、誰が守るの?

私を守っている間、その人は自分の身と私のとの両方の安全を、どうやって確保するの?」


「俺には、その力がない――と、君は思っているの?」


 瑠哀は首を振る。


「……私は、大人しく誰かの後ろに収まっている女じゃない、と言ったでしょう。

私が動く分だけ、私を守ってくれる人の命が危険にさらされる。

私が安全なのは、その人が私の盾になってくれているからだわ。

もし、私のせいでその人を失ったら、私はどうしたらいいの?

私は守られていたから良かったわ、って言えばいい?」
< 61 / 350 >

この作品をシェア

pagetop