瑠哀 ~フランスにて~
 ユージン達がすれ違い様、瑠哀は耳打ちする。


「何かあったら、ここに連絡してください。

それと、私の提案したことも、考えてみてください」

「…わかりました」


 母親は軽く頭を下げるようにして、ユージンと共に帰って行った。


「いい子だね。明るくて、とても素直だ」



 振り返ると、朔也がユージン達が出て行った方に目をやりながら言った。

 ゆっくりと瑠哀に向き、首をかしげるようにする。



「話は終わったの?

俺達も、君に話があるんだ。こっちに来て」


 瑠哀が椅子に腰を下ろすのを待って、朔也は切り出した。


「彼らは、誰だい?」

「以前に知り合ったの」

「パリで?」

「そう」

「随分、親しそうだけど、君の友人ではないだろう?

君はパリに来たばかりだしね。

彼らもここに来ていると、知っていたの?」

「友人、とまではいかないわ。

ただ、知っているだけ。だから、ここにいることも知らなかったわ。

会った時は、驚いたけれど」

「そうか。それで?」


 瑠哀は、何?、というふうに首を回す。


「俺達に話すことはない?」

「特別ないと思うけど」

「そうかな。スーツケースを投げたとか、海に飛び込んだとか、身に覚えはない?」

「ユージンが話したのね」
< 59 / 350 >

この作品をシェア

pagetop