瑠哀 ~フランスにて~
『―――もしかして、具合が悪いの?』

『いや……』


 そう言った朔也はどこか苦しそうで、その瞳は悲しげな色を映していた。


 瑠哀が何かを言おうとして口を開きかけたのを、朔也が止める。


『―――曲が終わった。行こう。ピエールが待っている』


 朔也は瑠哀の手を自分の腕に乗せ、瑠哀の視線を外すように真っ直ぐ前を見て歩き出した。
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