森の人
「き、来た」

その音と揺れがピークに達した時、それは空洞の前で止まった。

「…」

息を潜める五人。

緊迫した空気が空洞内を漂う。

外の様子を伺おうと、拓也が出入口の近くまで体を近付けた。


瞬間、


「うわーっ!」

空洞内に悲鳴が響く。

その生き物の巨大な口が、鋭い牙が、空洞内を襲った。

そして、それが引っ込んだかと思うと、すぐ様、鋭い爪が襲う。

「…!」

恐怖のあまり、悲鳴すら出ない。

声にならない声で、その攻撃を避ける五人。

顔のすぐ前を、鋭い爪が何度も何度も通過する。

空洞の中はそんなに広くはない。

一番奥の壁に体をへばりつけても、辛うじて爪の攻撃から逃れているという状況だ。

その距離、僅か数センチ。

誰かが少しでも押せば、瞬く間に爪の餌食になる。

五人はなす術もなく、ただただ、攻撃が終わるのを待つしかなかった。
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