森の人
「か、鍵を持っているからって、どうして澤山君が敵だと言えるんだ?」
拓也が切り出した。
「彼が鍵を持っている限り、この審議で犠牲になることはないわ」
「この審議に限らず、これからもね」
「扉が開くまで、彼はいなくてはならない存在だもの」
拓也を見るサヤカ。
「だったら、敵どころか、必要な仲間じゃないか」
と、返す拓也。
拓也の言葉を受け、
「ただ鍵を持っているだけならね」
そう言って、澤山を見る。
「言ってみて?あなたがあの女に言われた言葉」
澤山は怯えた声で言い始めた。
「自分の欲望や感情に素直に従った時、道は拓かれるでしょう」
それを聞くとサヤカは、澤山から三人に目をやり、
「澤山は、鍵を持っているのを理由に、誰からの攻撃も受けず生き延びて、扉が現れたら私達を犠牲にしようとしているの」
「自分だけが助かりたいっていう、欲望のままに、ね」
と言い、再び澤山を見て睨んだ。
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