森の人
そんなコウヘイに、サヤカが後押しをする。
「さっきから、澤山の肩を持っているようだけど、あなたの為に、澤山が何かした?」
思い返すコウヘイ。
「槍を作ったのも、獣の牙や爪を剥がしたのも、拓也に喜ばれたいから」
「沢で疲れて休んでた時だって、水を持って行ったのは拓也にだけ」
「あなたが蜘蛛に襲われた時も、ただ拓也の指示に従っただけ。助けに行こうともしなかった」
「きっと、茜の次はあなたを見殺しにする気だったのよ」
無言になるコウヘイ。
そして、コウヘイが澤山を庇わなくなったのを確認すると、今度は拓也に、
「拓也だって、私達三人が森の制裁で殺られた後、二人きりになって、何されるか分からないわよ?」
「知ってる?あなたが、飲んだ後に澤山に渡したペットボトル」
「彼、ずっと持ち続けていて、自分が飲み終わったらまた、あなたに渡してたこと」
「間接キス…出来て良かったわね」
と、追い討ちをかけた。
サヤカのその言葉に、澤山と目を合わせないようにする拓也。
そして、三人に向けて、更に言い続けた。
「それに、森が動き出したのだって、鍵を持った澤山が来たからじゃない」
「鍵と一緒に、澤山もいなくなれば、ここから出られなくても、平和な森で暮らせるはずよ?」
哀しく、重い空気が辺りを漂う。
澤山をフォローする者はもういない。
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