蕾~始まりへの旅~
第一章

曇り

冷たい風があたしの背中を押す。雨が上がったばかりの空はまだどんより薄暗い。そんな暗闇に引き込むように風は容赦なくあたしを急かす。思わず漏れたため息が冷たい空気の中で白くなって、スッと消えていった。

2年間付き合っていた大好きなあの人と別れた今年の冬は、例年より辛い。しかも一方的な別れ方。突然全くの音信不通になり、連絡が取れなくなった。最悪な恋愛を経験して、なかなか気分が戻らない。沈んだまんま、なんかダルい。

そんな気持ちを振り切るようにあたしは走り出した。周りの目も気にせず、全力疾走。白い息が絶え間なく現れ、耳が氷のように冷たくなっても走り続ける。
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