極上御曹司のイジワルな溺愛

「ところで里中さん、薫さんはどうしてる?」

「え? 薫さんですか?」

そう言えば、今日は薫さんの顔を見てないかも……。

里桜さんに聞かれて、そのことに気づく。

「どうせどこかで、油を売ってたんだろ。今頃は家で、のんびりしてるんじゃないか」

「油を売っていたかどうかは知りませんが、きっと家にいるはずです。呼んできましょうか?」

里桜さんからの返事も聞かず歩きだすと、振り出した手を取られた。

「ううん、いいの。時間も時間だし、もう夕ご飯も済んでるんじゃないかしら」

そう言って力なく微笑む里桜さんを見て、普段の彼女らしくないと小首をかしげる。

里桜さんが薫さん相手に、気を使うなんて……。

悪い意味で言っているわけではない。

いつもの里桜さんならこんな時、「それなら私が呼びに行くわ」と言って誰の静止も聞かず、真っ先に走り出してしまう。そんな女性だ。

そして里桜さんと薫さんの仲は、そういうものなのだと言いたいだけ。



< 139 / 285 >

この作品をシェア

pagetop