極上御曹司のイジワルな溺愛
「ダ、ダメですっ!」
とっさにそう叫び、蒼甫先輩の体を両腕で押し距離を取る。
「急にダメって、なんだよ。いまさらだろ?」
面白くなさそうな顔をした蒼甫先輩が、唇を尖らせた。
「だから、その、あれですよ、あれ……」
内容が内容だけにどう説明したらいいのか、しどろもどろになってしまう。
「あれ? あれって何?」
この流れで“あれ”と言えば、“あれ”に決まってるでしょ! わかってて言ってるなら、タチが悪いっていうもんだ。
それでもこのままでは埒が明かないと腹をくくる。
「だから。“あれ”の最中に薫さんが帰ってきたら、マズいと思うんですけど」
「ああ、それなら大丈夫。俺の部屋、鍵が掛かるから」
そういう問題だろうか。
「何。椛って、声が大きいとか?」
とぼけた顔をして私の顔を覗き込む蒼甫先輩に、呆れてしまう。
「そういう恥ずかしいこと、口に出して言わないで!」
顔からボッと火が出て、恥ずかしさから蒼甫先輩に背を向けた。