極上御曹司のイジワルな溺愛
「里中さん、お疲れ様。新婦のドレスが気になっちゃって、お邪魔させてもらったわ」
里桜さんがまるで労るように、私の肩に手を乗せる。
「お疲れ様です。そうですよね、ライブで新婦がウェディングドレス着ている姿は、日本にいるときにしか見れないですもんね」
「ええ。外人モデルと日本人の体格は違うから、とても参考になるの」
「お色直しのカラードレスも楽しみですね」
会場の奥に移動して小声で話をしていると、今まで笑顔で話していた里桜さんの表情が曇る。
「どうかしましたか、里桜さん?」
「里中さん、今晩時間あるかしら?」
「今晩ですか……」
ふと「今晩たっぷり甘えさせてやる」と言った悪そうな、蒼甫先輩の顔が脳裏に浮かび、慌ててそれを消し去る。
「はい。私もお話したいことがあります」
里桜さんの話は、きっと香るさんのことで間違いない。ふたりの間に何があったのか、聞かないことにはこれ以上動きようがなかった。
薫さんには偉そうなことを言ってしまい怒らせてしまったけれど、乗りかかった船だし最後まで責任をもちたい。
このことを蒼甫先輩に話せば、また「やめておけ」と言われるに決まっている。だから今晩のことは彼には内緒。嘘を付くのは心苦しいけれど、ここは致し方ない。