極上御曹司のイジワルな溺愛

会場内を見渡し、挨拶に来ると言っていた蒼甫先輩の姿を探す。

大丈夫、まだ来ていない──

蒼甫先輩のことだ。私が里桜さんと話している姿を見たら、何かあると勘ぐるに決まっている。

「里桜さん、今晩のことは副社長には秘密でお願いします」
「わかったわ」

こういうことは、女ふたりだけで話すほうがいい。とくに蒼甫先輩みたいなに完璧な人が加わると、まとまる話も上手くまとまらなくなる。

ここは穏便に進めないと、里桜さんと薫さんの関係だけじゃなく、仕事にも影響が出る。

もちろん、前者のほうが再優先事項だ。

けれどもチェリーブロッサムとの関係だって、雅苑の未来には無くてはならないもので……。

ここは私が、一肌脱ぐしかないよね。

ヤル気が漲り眼力強く里桜さんを見つめると、彼女が驚いたように目を見開く。

「じゃ、じゃあ、今晩の場所は私が決めてメールおくわね」

チャーミングな笑顔でウインクをすると、ほのかに甘い香りを残して会場を出ていった。彼女の背中が消えたドアを、しばし見つめる。

やっぱり里桜さんは素敵な人で、私の憧れの存在だ。

「彼女のためにも頑張らなくちゃ」

そう心に強く決めパッと振り返ると、最高の笑顔で司会台へと向かった。





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