極上御曹司のイジワルな溺愛
「里桜さん、こんばんは」
電話を切ってから十五分。大将にお願いして移動していた個室に、蒼甫先輩が顔を出す。
里桜さんには挨拶するのに、私のことは無視ですか?
まるで同じ部屋に居ないかのように扱われてむくれていると、里桜さんが笑い出した。
里桜さんが、こんな笑い上戸だとは知らなかった。
横を見れば、蒼甫先輩は対象的に、不機嫌極まりない。
蒼甫先輩の隣で居心地の悪い気分でいると、「はあ……」と溜息を漏らした先輩が私の頭を机へグッと押し倒す。
「里桜さん。こいつが勝手なことをして、すまない」
蒼甫先輩も頭を下げているけれど、なんで私だけ机におでこをグリグリされてるんですか?
いたたまれなくなって力いっぱい頭を上げる。大きく息を吸い込むと、キッと蒼甫先輩を睨みつけた。
「何するんですか!」
「それは、こっちのセリフだ! 何度もやめておけって言ったのに、お前ってやつは……」
呆れて物が言えないとでも言いたいのか、蒼甫先輩は頭を抱え黙ってしまう。
「じゃあ本当に、あのまま放っておけとでも言うんですか? そんなの薄情です」
言い過ぎだとわかってるのに、口の止め方がわからない。
「里中さん、ちょっと落ち着いて。蒼甫くんも来た早々、そんな頭ごなしに怒鳴りつけるのは良くないわ」
里桜さんが間に入ってくれてヒートアップしていた空気が少し下がったような気がしなくもないけれど、私の気持ちは一向に収まらない。