極上御曹司のイジワルな溺愛

「薫さん、あれからずっと逃げ回ってるみたいで。どうにかして話し合いができるといいんですけど。蒼甫先輩、何かいいアイデアありませんか?」

私が電話したところで、今朝のこともあるし出てくれない可能性が高い。だったら兄弟である蒼甫先輩が連絡をとったほうがいいとは思うけれど。

「里桜さん。兄貴が逃げ回ってる理由は、もしかして奈々ちゃん?」
「そう、そのもしかして、でね。薫さん、逃げ腰になってしまって。相手は六歳の女の子よ。彼女の言うことなんて
話半分で聞いておけばいいのに、彼はなんでも真剣に受け止めてしまうから」

そこが薫さんの良いところだと思うけれど。家族になるということは、そんな簡単なことではないみたいだ。

「そうか、わかった。椛、次の休みはいつだ?」
「休み? えっと……四日後の水曜日、だったと思います」
「じゃあその日に『MIYABI』との緊急会議を設ける。ちょうど討議する議題もあるし、二時間弱の会議をして、上役が帰ったら里桜さんと椛が合流したらいい。兄貴は俺が引き止めておく」

おお、頼もしい──

さすがは蒼甫先輩だと頷き、彼を見つめた。

「なんだ、見惚れて。惚れ直したか?」
「そ、そんな見惚れてなんかっ……」

傲慢、自意識過剰! 普通の男性はそんなこと、自分で言わないでしょ!

でも蒼甫先輩は本気で言っているらしく、私の腰に左腕を回し入れると体をグッと引き寄せた。



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