極上御曹司のイジワルな溺愛

披露宴の祝宴は、つつがなく進んでいる。

お色直しも終わり新郎新婦が会場に戻ってくる。マジックキャンドルでのキャンドルサービスや友人のスピーチ・余興も終わり、ご両親への花束贈呈、新郎の謝辞と進み、最後に新婦の梨加さんへとマイクが回された。

え? なんで梨加さんにマイクが渡されるの? そんなの進行表にないんだけど……。

進行表をぺらぺらと捲り確認してみても、どこにもそんなことは書かれていない。どうしようかと顔を上げると、私を見てニコリと笑った梨加さんがマイクに向かって話し始めた。

「本日か平日にもかかわらず、こんな大勢の方に来ていただき、本当にありがとうございました。みなさんもご存知のように、私たちの結婚披露宴は本当ならば一月末に行われるはずでした。しかし私の不注意が原因であんな事件が起きてしまい、皆様にも、そしてここにいる雅苑の従業員の方たちにも多大なご迷惑をかけてしまいました。この場を借りでお詫び申し上げます」

梨加さんと康生さんが深々と頭を下げ、会場が静まり返る。

そんなこと、もう、気にすることないのに……。

そう思っても、あの日のことを思い出してしまった私は、その場で動くことができなくなっていた。

「そして……」

梨加さんはそこで言葉を切ると立ち尽くしている私の方を向き、涙をいっぱい溜めた目で見つめた。

「里中さん。あなたには大怪我までさせてしまって、本当にごめんなさい。ずっと私のことを気にかけていてくださったのに、悩んでることを話すことができなくてごめんなさい」

我慢しきれなくなった涙が、梨加さんの瞳からこぼれ落ちる。

「そ、そんな……。私の方こそ梨加さん、あなたのお力になれなくて、披露宴を中止にしてしまって、本当に……ごめんなさい」

胸が一杯になってしまい、言葉に詰まってしまう。



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