極上御曹司のイジワルな溺愛
どんな事があっても、MC(司会者)は取り乱していけない。もちろん、泣くなんてもってのほかだ。

下唇をかみ、込み上げそうになる涙を必死に堪える。

と、いつの間にか近くに来ていた梨加さんが、私の肩にそっと触れた。

「里中さん、顔を上げてください。今日は雅苑さんのご協力とあなたのお蔭で、こんな素敵な披露宴を挙げることができました」

「私は何も……」

それを言うなら、お礼を言わなきゃいけないのは私の方だ。

この披露宴のMCを私に任せてくれて、怪我が完治するまで待ってくれた。それが、どんなに嬉しかったことか。

堪えきれなくなった涙が、一筋頬を伝う。

「そこで今日は里中さんに、私たちからプレゼントがあります」

え? 何? 私にプレゼントって……。

さっきから進行表にないことばかり起きて、頭がうまく回らない。

とその時、会場内に聞き覚えのある音楽が流れ始めた。

この曲って──

この前、蒼甫と温泉にでかけた時、車の中でかかっていた曲だ。でもなんで、ここで音楽が流れるの?

わけのわからない私は、辺りをキョロキョロと見渡した。するといつの間にか会場内には、雅苑の従業員までもが集まってきている。

な、なにが始まるの?



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