極上御曹司のイジワルな溺愛
「今日の今日でウィークリーマンションに帰すのも心配だし、今晩はうちに来る?」
「え? いいの?」
こんな時だからこそ甘えるのはどうかと思うけれど、今はひとりで過ごす自信がない。今日のところは麻奈美の誘いをありがたく受けようと思ったその時、医務室に会長が現れた。
「椛ちゃん、倒れたんだって?」
「会長!? 今日はどうされたんですか?」
さすがに会長を目の前にして寝ているわけにもいかず、重い体を起き上がらせる。
「ちょっと用事があって顔を出したんだが、君が倒れたって聞いてね。なんでも家を追い出されて、先週からひとり暮らしを始めたんだって?」
「どうしてそれを……」
「風のうわさだ、気にするな」
会長はそう言って、いつもどおりの笑顔を私に向けてくれる。
気にするなと言われても……。
六十代とは思えない細身のスタイルに、サラッと風になびく髪。会長と副社長は見た目こそソックリなのに性格は正反対で、ほんとに親子か? と思ってしまうほど素敵な紳士。
入社と当時から呼び名は椛ちゃんで、副社長と大学が一緒で歳もひとつしか違わないからか、とても可愛がってもらっている。