極上御曹司のイジワルな溺愛

細かい雑貨や日用品をダンボールの中に入れ、綺麗に片付いた部屋の中を見渡す。

「もう忘れ物はないか?」

蒼甫先輩の呼びかけに頷くと、先輩は最後のダンボールを持ち上げた。

「先輩、それ私が持ちます」

ダンボールに手を掛けようとしたけれど、蒼甫先輩はそれをひょいと高く上げてしまう。

「いいから、さっさと鍵かけろ。腹減った、飯食いに行くぞ」

「でも……」

私の部屋の引っ越しなのに、ほとんど蒼甫先輩にやらせてしまった。いくら先輩からの申し出でも、これでは申し訳ない。

そう言えば蒼甫先輩、昼飯奢れって言っていたような。ちょっと奮発して、高級イタリアンでも行っちゃう?

一週間前まで実家ぐらしだった私は、結構な額の貯金があったりする。普段買うものも、MC用のスーツと化粧品ぐらい。

どうせ派手に使うなら、何かとお世話になっている蒼甫先輩に使うのが一番いい。

そうと決まれば、善は急げ。

玄関に鍵を掛けると、気持ちも軽やかに先輩のあとを追いかけた。



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