FatasyDesire~ファンタジー・ディザイア~
ヨシュアは自分はパンドラの操作が上手いと自負している。
クレドのような無のパンドラ相手には無効だが、どんな記憶でも好きなように操作してきた。
相手の記憶ごと抜き取ったり、細かく改ざんしたり、はたまた覗くだけだったり。
小さな頃から共に育ってきたパンドラは最早彼の体の一部だといっても過言ではないし、パンドラのない生活なんてものも想像できない。
だからヨシュアは、この異常な状態に目を見開いた。
「……」
――キリエの記憶が、何一つ見えない。
今まで全くなかったケースに、ヨシュアは戸惑うだけで、どうすればいいのかわからなくなった。
パンドラの制御ができなかった幼少期は、嫌でも周囲の記憶が見えたりしたというのに。
キリエが無のパンドラを持ってるというのなら話は別だが、無のパンドラは数少ないパンドラの中でも相当珍しいもので、早々いるものではないのだ。
だから彼女にその可能性はないと断言できた。
「……ヨシュア?」
キリエはずっと自分の手を握って、何かに驚いているらしいヨシュアを不思議に思い、声をかける。
それでも彼は何も反応はせず、ただ唖然としていた。
「どうしたの? どこか具合がわるいの?」
可愛らしくも綺麗な声は、なんと心地好いのかと一瞬でも思ったヨシュアだったが、今のこの訳のわからない状況ではそれがただ鬱陶しかった。
「……んだよ、コレ……」
ギリッと歯ぎしりをして、小さな手を握る握力を強める。
キリエはその痛みに顔を顰めて、「いたいよ」と言う。
けれどもヨシュアが離す気配はない。
「ヨシュア、いたいっ!」
彼女は思い切り手を振り払おうとした。
いや、実際そうしたのだが結果は変わらず、それどころか、逆に物凄い力でその手を引っ張られたのだ。
ヨシュアは力加減もせずに小さな体を、石段の三段目に叩き付けた。
背中を打ち付けたキリエは瞬間目を見開いて、次に苦しそうに咳き込んだ。
幸い頭は打たなかったが、それでも体は痛かった。
キリエが石段に叩き付けられたのと一緒にヨシュアはその上に馬乗りになった。
咳を繰り返したキリエの目には涙が溜まっており、苦痛に顔も歪んでいた。
女子どもでも平気で殺せるヨシュアにとっては、たかが少女一人のそんな顔にも動揺などしない。
今は早く、この少女からクレドの記憶を覗くことが先だ。
「ヨシュ、ア。ど、して……っ」
キリエは今日友達になったつもりでいた相手に、何故こんな乱暴をされるのかが理解できず、それでいてそのことがショックだった。
初めての同年代らしい少年の友達は、キリエにとってはこれからの楽しみや嬉しさになっていくはずだったのだ。
しかしヨシュアにとっては違う。
キリエはただの利用道具であり、それ以上でも以下でもない。
単純すぎる道具に過ぎないのだ。
ヨシュアはキリエの首に片手をかける。
折れそうな程細いそれに、体重と圧をかけた。
ひゅっと息を飲んだキリエは、一瞬にして正常な呼吸ができなくなった。
「あ……ッぁ」
キリエは詰まった呻き声を挙げ、自分の視界がグルリと回る感覚に陥る。
「……ショック療法っつーの? 痛みを与えれば、お前の記憶を引きずり出せんじゃねーかと思ってよォ」
ヨシュアは口角を吊り上げて、「つーか療法じゃねェかコレ」と一人で笑った。
キリエは首を絞める大きな手を掴んで引き離そうとしたり、足をバタバタとさせたりするが、どれも意味はない。
ヨシュアにとっては赤子が暴れているようなものだ。
「ゃ……あッ、」
「チッ。まだ見えねェ」
首を絞めてもキリエの記憶はチラリとも見えず、まるで固い南京錠をかけられているようだ。
結構な力を入れて絞めているのにも関わらず、ヨシュアは次はもう片方の手でも上から押さえつけた。
大きな瞳から、苦しさからの生理的な涙が流れ出る。
瞳孔も開いており、キリエの頭の中は真っ白で、もう意識も飛びそうだった。
クレドのような無のパンドラ相手には無効だが、どんな記憶でも好きなように操作してきた。
相手の記憶ごと抜き取ったり、細かく改ざんしたり、はたまた覗くだけだったり。
小さな頃から共に育ってきたパンドラは最早彼の体の一部だといっても過言ではないし、パンドラのない生活なんてものも想像できない。
だからヨシュアは、この異常な状態に目を見開いた。
「……」
――キリエの記憶が、何一つ見えない。
今まで全くなかったケースに、ヨシュアは戸惑うだけで、どうすればいいのかわからなくなった。
パンドラの制御ができなかった幼少期は、嫌でも周囲の記憶が見えたりしたというのに。
キリエが無のパンドラを持ってるというのなら話は別だが、無のパンドラは数少ないパンドラの中でも相当珍しいもので、早々いるものではないのだ。
だから彼女にその可能性はないと断言できた。
「……ヨシュア?」
キリエはずっと自分の手を握って、何かに驚いているらしいヨシュアを不思議に思い、声をかける。
それでも彼は何も反応はせず、ただ唖然としていた。
「どうしたの? どこか具合がわるいの?」
可愛らしくも綺麗な声は、なんと心地好いのかと一瞬でも思ったヨシュアだったが、今のこの訳のわからない状況ではそれがただ鬱陶しかった。
「……んだよ、コレ……」
ギリッと歯ぎしりをして、小さな手を握る握力を強める。
キリエはその痛みに顔を顰めて、「いたいよ」と言う。
けれどもヨシュアが離す気配はない。
「ヨシュア、いたいっ!」
彼女は思い切り手を振り払おうとした。
いや、実際そうしたのだが結果は変わらず、それどころか、逆に物凄い力でその手を引っ張られたのだ。
ヨシュアは力加減もせずに小さな体を、石段の三段目に叩き付けた。
背中を打ち付けたキリエは瞬間目を見開いて、次に苦しそうに咳き込んだ。
幸い頭は打たなかったが、それでも体は痛かった。
キリエが石段に叩き付けられたのと一緒にヨシュアはその上に馬乗りになった。
咳を繰り返したキリエの目には涙が溜まっており、苦痛に顔も歪んでいた。
女子どもでも平気で殺せるヨシュアにとっては、たかが少女一人のそんな顔にも動揺などしない。
今は早く、この少女からクレドの記憶を覗くことが先だ。
「ヨシュ、ア。ど、して……っ」
キリエは今日友達になったつもりでいた相手に、何故こんな乱暴をされるのかが理解できず、それでいてそのことがショックだった。
初めての同年代らしい少年の友達は、キリエにとってはこれからの楽しみや嬉しさになっていくはずだったのだ。
しかしヨシュアにとっては違う。
キリエはただの利用道具であり、それ以上でも以下でもない。
単純すぎる道具に過ぎないのだ。
ヨシュアはキリエの首に片手をかける。
折れそうな程細いそれに、体重と圧をかけた。
ひゅっと息を飲んだキリエは、一瞬にして正常な呼吸ができなくなった。
「あ……ッぁ」
キリエは詰まった呻き声を挙げ、自分の視界がグルリと回る感覚に陥る。
「……ショック療法っつーの? 痛みを与えれば、お前の記憶を引きずり出せんじゃねーかと思ってよォ」
ヨシュアは口角を吊り上げて、「つーか療法じゃねェかコレ」と一人で笑った。
キリエは首を絞める大きな手を掴んで引き離そうとしたり、足をバタバタとさせたりするが、どれも意味はない。
ヨシュアにとっては赤子が暴れているようなものだ。
「ゃ……あッ、」
「チッ。まだ見えねェ」
首を絞めてもキリエの記憶はチラリとも見えず、まるで固い南京錠をかけられているようだ。
結構な力を入れて絞めているのにも関わらず、ヨシュアは次はもう片方の手でも上から押さえつけた。
大きな瞳から、苦しさからの生理的な涙が流れ出る。
瞳孔も開いており、キリエの頭の中は真っ白で、もう意識も飛びそうだった。