鏡の国のソナタ
「いやぁっ! 嫌よ!

なに、勝手に、死んだあとの相談してるのよっ!

あたしは、そんなこと頼みに来たんじゃないわっ!」

素奈多は、さっきまで座っていた窓際の椅子の近くに置いてあった、よく切れそうな薄い刃物を手に取った。

ディスポーザブルのメスだった。

素奈多は、自分の喉元にそれを突きつけ、懇願するように言った。


「おねがい……。クランを助けて……。

代わりに、あたしの命、あげるから……。

クランが助かるなら、あたし、死んでもいいから……」

< 212 / 267 >

この作品をシェア

pagetop