銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 何の補償も確証も無いと知った『言葉』を、信じたいと思う自分がいる。

 信じたいと思える自分がいる。

 ダイヤモンドは、ちっとも永遠なんかじゃなかったし。パンフレットはただの資源ゴミ。

 結納品の子産婦(こんぶ)も、友白髪(ともしらが)も、無駄になった。

 それでも……。

 モネグロスの純粋さを信じたい。

 神の船の一途さを信じたい。

 土の精霊の健気さを信じたい。

 火の精霊の熱い心を信じたい。

 そして……。

 銀の粒子に輝く瞳の、見つめる先を信じたい。

 たった独りで困難から立ち上がった、風の力を信じたい。

 そして、彼の言葉に応えたい。

 あたしもここへ来られて良かったと、心から思える時を迎えたい。

 そうすれば、きっとあたしの中で何かが変わる。あの時の苦しみにも意味が生まれる。

 これは、そのチャンスなんだ。

 否応無くこの異世界飛ばされて、やむなくここまで来たけれど。ここからは違う。

 これはあたしが望む旅。あたしの意思で決めて進む道だ。

 誰のためでも、誰のせいでもない、自分自身ための。

 何かを変えて、何かを掴む。道行く先の希望を信じて。

 具体的に何があたしに出来るのかは、まだぜんぜん分からないけど、それでも出来る事を『やりたい』と思える自分が嬉しい。
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