銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 でも体が動かない! 怖い! 怖い! 怖い!

 冷や汗がダラダラと流れ落ちる胸元から、恐怖にすすり泣くノームの幼い声が聞こえてくる。

「ひっく……ひっ……」

 あぁ、何とかしなきゃ! この子を守れるのは、今、ここにあたししかいない!

 あたしが守らなきゃ誰が守るの!?

―― フッ……!

 狂王の目に闘気が宿り、あたしの背中を伝う汗が一瞬で冷えた。

 来る! ……と思った瞬間、狂王が素早く踏み込み、白く輝く剣の切っ先ががこちらに向かって突き出される。

「ダメ――――――!!」

 あたしは力一杯叫んでギュッと目を瞑り、無我夢中で両手を前に突き出した。

―― パッシ――――ン!

 そして、両手の平に感じる、無機質な冷たい感触。

「……お……お?」

 あたしは一呼吸おいて、閉じていた目を恐る恐る開いた。

「おぉ……お!?」

 開いた目には、驚いたように目を丸くしている狂王が見える。
 そして……

 しっかりと、あたしの両手の平が挟み込んで押さえている、狂王の剣!

「おおおお―――!? 真剣白羽取りぃ!?」

 恐怖感に満ちていたあたしの胸が、喜びに爆発した。

 やったわ!これぞ奇蹟よ! 天は正義に味方するんだわ!

 まさか成功するとは自分でも思ってなかったけど!
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