銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 ゆうべは地下牢で一睡も出来なかった。

 その上、揺れる馬車で遠出したし、妖怪馬には追いかけられるし。

 奇妙な石柱は不気味に振動するし、ヴァニスには剣で脅されるし。

 もうクタクタよ……。

 疲労しているところに満腹感も重なって、てきめんに睡魔が襲ってきた。

 泥に引き込まれるように、あたしは眠りに落ちていく。


 そして、ふと目覚めた時、あたりはもう夜だった。

 なんだか体がだるい。まだ疲れも眠気も残ってる。

 ぼんやりした頭で、暗闇に目が慣れるのを待った。

 徐々に目が慣れてくると、テーブルの上に燭台が用意されているのが見える。

 あたしはソロソロと身を起こし、窓の方へ近づいた。
 そして扉を開け、外の様子を窺う。

 城のあちこちの窓から、まるで電球みたいな明るい光が漏れている。ロウソク程度の光りじゃ、こうはならない。

 やっぱり精霊の長が、明かりを灯しているんだわ。

 空には満天の星。無数の光が闇夜に瞬いている。

 息を飲むようなその美しさに、あたしの心は激しく疼いた。

 ジン……。
 星空の下で、毎晩交わしたあなたとの約束。
 必ず無事に帰るからと……。

 今頃、どれほど気に病み心配しているだろう。

 ごめんなさい。こんな事になってしまって。

 でもあたしは、なんとかまだ生きてる。無事でいるわ。
 それを伝えたい。
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