銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 ぎゅううと全身が痛みに締め付けられる。

 虚しくて虚しくて、切なくて悲しくて、あたしはむせび泣いた。

 しょせん人間。

 しょせん精霊。

 あぁ……終わった。

 あたしの今までの願いと旅が、『しょせん』のひと言で、終わってしまった。

 こんなにもあっけなく……。


 ヴァニスはあたしの髪を撫でながら、いつまでも泣き続けるあたしを、飽きることなく抱きしめている。

 ごめんなさいヴァニス。どうかもう少し時間をちょうだい。

 いずれ、城へ行くから。

 あたしはそれを選んだんだから。

 だからまだ、まだ少しだけ泣かせて。

 どうせもう、全ては終わってしまったんだから。


 泣き続けるあたしの体に風が吹く。

 でもこれはジンの風じゃない。

 彼はもういない。

 いないんだ。


 ジンが居ない事。もう、終わってしまったこと。

 ただそれだけを噛み締めるように、あたしはヴァニスの胸で泣き続けていた。


 この先の、分かりきってしまった自分の運命を思いながら……。



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