銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 どういう意味かと疑問に思うあたしに、ヴァニスは微笑みながら答えた。

『精霊の長と、その件については既に対策済みだ。お前は何も心配せずとも良い。何も案ずることなく余の隣に居れば良いのだ』

 優しい笑顔でそう言いながら、あたしを抱き寄せ髪にキスをする。

 彼からのキスを簡単には受け入れられず、軽く体をよじりながら思った。

 あぁ、やっぱり聞いてもらえなかった。

 今の人間にとって、自分達が滅亡するなんて話はだたの絵空事にしか聞こえないのね。

 それを承知でここに残ったのは、あたしの意思だけど。

 虚しく、やるせない思いが胸に溢れて、どうしようもない虚脱感と絶望感に襲われる。

 ……それにしても……。

 ノームの姿をぼんやり眺めつつ、あたしは物思いにふける。

 ヴァニスは『その問題に関しては、精霊の長と対策済みだ』って言ったわよね? どんな対策があるっていうのよ?

 でもヴァニスの態度はずいぶん自信満々で、余裕すら感じた。

 あんなにきっぱり言い切るくらいなら、ひょっとしたら……

 本当に、人間の滅亡を回避する策があるの……?

 そう考えた途端、あたしの胸が久々に元気に跳ね始める。

 気配を感じ取ったノームが、なにごと?という表情であたしを見上げた。

 精霊の長って、こう言っちゃなんだけどかなり年季の入った精霊よね?

 あたしが今まで見たご老体の中でも、格別枠でお年寄り。

 失礼だけど、あれで生きてるのが不思議ってレベル。

 これはミイラか?生物か?って聞かれたら、絶対ぶっちぎりでミイラに一票よ。

 あれだけ長生きしてたら、そりゃあ知恵も知識も溜まるわよね?

 だったら本当に、あたし達には分からない知識があるのかもしれない。

 まだ事態を諦めずに済む方法を知ってるのかもしれない。

 ……ちょっと! それならそうと早く言ってよ! 長!

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