銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
汚染された水
 やっぱりここに!? なぜここに!?

 なんで!? どうして!? なにを……

「なにをしているの!? マティルダちゃん!!」

 わけもわからず無我夢中で駆け寄って、マティルダちゃんの両肩を掴み激しく揺さぶる。

「マティルダちゃん! マティルダちゃんったら!」

「うふふ、ふふ」

 ガクガクと揺さぶられながらも、彼女は笑うのをやめようとしなかった。

 懸命に呼びかけても、惚けた瞳はあたしを見ない。

 しっかりと握り締めた自分の両手の中の宝石だけを見続けている。

「マティルダちゃん! しっかりして! こんなもの持ってちゃだめよ」!

 あたしは、彼女の手の中の宝石を勢い良く床に払い落とした。

 途端にマティルダちゃんの両目に意思が戻る。

「なにするのよ!!」

 敵意のこもった声を張り上げ、やっとあたしの方を見た彼女の目に、意思が戻った。

「あ……? 雫、さま?」

 あたしを見上げる、不思議そうな表情。

「どうしてここにいるの?」

「それはこっちのセリフよ! あなたここで何してるの!? これはいったい何なのよ!?」

 形相を変えて詰め寄るあたしを、ポカーンと見ていたマティルダちゃんは、再びケラケラ笑い出した。

「あぁ、見つかってしまったのね。せっかく今まで隠していたのに。ここはね、マティルダの秘密の場所なの」

 さも重大な秘密を打ち明けるように、得意気に声をひそめる。

「いくらでも宝石が手に入る、素晴らしい楽園よ」

 そう言って彼女は、幸せそうにまた笑った。
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