銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
「楽園!? これのどこが楽園なのよ!?」

「すごいでしょう? 欲しい宝石がいくらでも手に入るのよ?」

「マティルダちゃん! 自分が何を言ってるか分かってるの!?」

「本当はダメだけど、雫さまならここに居てもいいわよ。許してあげる」

「マティルダちゃん聞いてるの!?」

「マティルダね、雫さまが大好きだから。大好きな人は特別に許してあげてるの」

 後ろを振り返ったマティルダちゃんの視線の先には、侍女達がいた。

 みんな精霊が吐き出す宝石を拾い上げ、嬌声を上げて歓喜している。

 あたしは信じられない思いでその光景を見ていた。

 侍女達まで。みんないったい何をしているの?

 この状況が分かっているの? ちゃんと目に見えているの? 自分が手にしているその宝石が……。

「今どうやって生まれているか、分かっているの!?」

「もちろん分かってるわよ? 精霊が作っているんでしょう?」

 マティルダちゃんに屈託の無い笑顔であっさり返答されて、逆にあたしが言葉に詰まる。

「宝石は自然の物だもの。精霊でなければ作り出せない事くらい、知ってるわ」

「作り出すって、そういう状況じゃないでしょう!?」

 どんな作用か分からないけど、この繭が無理矢理に宝石を吐き出させている!

 絶対にこれは自然の状態じゃない!

 自然の理を捻じ曲げて、強引に宝石を製造させられているんだ!

 そうでなければ、みんなこんな恐ろしい悲鳴を上げたりしないわ!

「これは拷問よ! 耐え難い苦痛を伴う拷問だわ! 一刻も早く精霊達を助けなきゃ!」

「あら、どうして?」

「ど、どうしてって……!」

「だって、ただの精霊でしょう?」

 首を傾げ、あっけらかんとマティルダちゃんは言った。
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