銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
「ガアァァァッ!!」

 返答するようにアグアさんが叫び返した。

 憎しみと恨み骨髄に達した叫び声に呼応して、暗黒の雨の勢いが更に増す。

 あたしの足元に溜まった黒い水が、ザワザワと細かく振動しはじめた。

 まるで群がる虫のような動きをし始めた水が、足元からわらわらと這い上がってくる。

「うわあ!? き、気持ち悪い!!」

 あっという間に、全身が水の膜で覆い尽くされて、息ができない。

 目の前も真っ黒で何も見えず、慌てて顔の周りの水を手で振り払った。

 でもすぐにまた水で覆われてしまう。ジタバタと手は空を掻くのに、あたしの周りには酸素が存在しなくて、呼吸ができない。

 厚さでいえば、ほんの数ミリしかない水の膜。

 こんな薄い膜で窒息死するなんてシャレにならない!

 何も見えない反面、聴覚は敏感になった。

 あたしの全身を覆う水の音が聞こえる。この暗黒の雨も、やはり間違いなく水なんだわ。

 水。水。

 ……水の精霊。

 あの日、砂漠で出会った、この世界で初めて巡り合った存在。

 あなたも同じね。世界の行く末を、そのままには受け入れなかった。

 拒絶する証として、自分の命と引き換えに、あたしに力を託して逝った。

『仲間を、世界を救って欲しい』

 それがあなたの選んだ意思。

 ここであたしが諦めてしまったら……あの世であなたに合わす顔もないわ!!
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