銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 当たり前、か。

 そうよね。本来なら当たり前の事なのよね。

 同じ世界に生きるもの同士、助け合うのが。

 でも、それができなかった。どうしても。

 それぞれの感情や立場の違いのせいで、当然の事が不可能になってしまう。

 すれ違い、憎み合い、傷付け合って、恨みは募るばかり。

 それが今、種族の壁を越えて手を取り合っている。

 世界を救うという目標に向かって、あたしがあれほど願って叶えられなかった希望が、今まさに叶えられようとしている。

 番人という共通の敵の出現によって生まれたこの連携が、良いことなのかそうでないのか。

 果たして、本当の意味での希望の実現なのか。

 真実、種族間の相互理解といえるものなのか。

 始祖の神の一件が片付いた後に、皆の意識がどう変化するのか。

 それはまったく分からない。

 ただ、これは明らかに何かの予兆だ。

 変わる事がどうしてもできなかった世界の、小さな前進。

 そう、前進。一歩前へ進んだんだわ。

 その行く末に何があるのか、道行く先に希望はあるのか、もっと進んでみなければ分からないし、形作るのは世界に生きる者達の意思。

 答えを見つけるためにも、世界を守らなければならない。

 ここに生きる者の命を守らなければならない。

 終焉にしてはいけない。絶対に。


 なんとしても始祖の神から世界を救う!

 やっと見つけた光を閉ざしはしないわ!

 なにがあろうと救わなければならない! みんなの力で!


 決意も新たにあたし達は突き進む。

 始祖の神降臨の、その場所へと……。


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