銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
代償
 町を抜けた途端に、周囲に人工的な建造物は何も見当たらなくなった。

 やがてどこまでも広がる草原の遥か向こうに、見覚えのある三本の石柱が見えてくる。

 ……見えた! 始祖の神降臨の場所!

 ただ、以前とは違ってその周辺の空気は一変していた。

 夜かと見紛うほど暗い空と、一際黒い厚い雲。

 石柱の真上のその雲が、まるで意思を持っているかのようにグルグルと渦巻いている。

 こんな不気味な空なんて見た事も無くて、圧倒されたあたしはゴクリとツバを飲んだ。

 空の色も、雲の厚さも、何もかも、とてつもなく悪しきものの襲来を予兆している。

 本当に来るんだわ。破壊の神が。

 空気がピリピリ肌に差す感覚と、奇妙な音が伝わってくる。

 これは振動音だわ! あの時と同じ、まるで何かを呼ぶために共鳴しているような振動音!

 てことは、もう神の降臨が始まっているの!?

 臆することなく全力で走る馬が目的地に近づくに連れて、三本の石柱の真ん中辺りに何かが見えてきた。

 目を凝らしたあたしは、悲鳴をあげる

「モネグロス!」

 モネグロスが倒れている!

 いや、あれは倒れているというよりも、捧げられている!?
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